ダ・ヴィンチ - ワラウ

つくるべきもの、食べたいものがわからない私がたどり着いた、献立の解決策/料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。⑧

2021年5月26日

  • 36歳のときにうつ病を患い、料理だけができなくなってしまった食文化ジャーナリストの著者。家庭料理とは何か、食べるとは何かを見つめなおした体験的ノンフィクションです。


    料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。
    『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。』(阿古真理/幻冬舎)

     うつで一時期、寝たきりに近い生活だった私は、1年弱ぐらい経つと日常的に料理をつくれるようになった。自転車でなら出かけられるが、気力はあまり湧かない。夫に「そのままだったら、あかんようになるぞ」と言われ、仕事を少しずつふやし始めた頃。夫にハッパをかけられて昔勤めていた会社に営業へ行き、フリーになり立ての頃に世話になった同期の男性を通じてまた仕事をもらい、社会生活に復帰し始めていた。


     あの頃、あまり口を閉じて寝られなくなっていたため、口の周りが荒れ、ひんぱんに虫歯になった。友人づき合いもほとんどなかった時期で、外出する予定といえば歯医者に行くことくらい。その頃の私は、毎日の献立づくりに苦しんでいた。

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