ダ・ヴィンチ - ワラウ

悲しいのは自分だけじゃない。「ごく普通の人々」のドラマを通して、読者に寄り添うノンフィクション・コラム!

2021年6月6日

  • 晴れた日にかなしみの一つ
    『晴れた日にかなしみの一つ』(上原隆/双葉社)

     悲しみは、誰にだって存在する。幸せそう、楽しそうと傍から見える人にだって、心の奥底に忘れられない過去や苦悩が横たわっていたりする。人の数だけ物語がある。人の数だけ涙がある。上原隆氏による『晴れた日にかなしみの一つ』(双葉社)は、そんなことに気付かせてくれるノンフィクション・コラム集だ。


     新婚の息子をひき逃げ事故で亡くした父親、希望退職を強いられたサラリーマン、パチンコ中毒の妻に悩まされる夫、アルコール依存症の母親を許せなかった息子、「婚活」に翻弄される男女、何の仕事をしても要領が掴めない博士号取得者…。本書の20のコラムに登場するのは、決して特別な人たちではない。どの人物も、私たちの近くにいたっておかしくはない、ごくごく普通の人たちだ。そんな人たちに、著者はスポットライトをあてていく。彼らの悲哀や苦悩、挫折に優しい視線を向けていく。著者の丹念な取材と鋭い人間観察力が垣間見られる温かな文章には誰もが惹き込まれてしまうことだろう。

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